ライターとして重宝されるスキルのひとつに取材記事のライティングがあります。しかし、「実際の取材方法や段取りなどがわからない」「ライターによって取材方法が異なるため、何を参考して学ぶべきか迷う」と悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、取材にはじめてチャレンジするライターに向けて、企画から取材方法、ライティングまでの一連の流れを解説します。
取材を成功に導く5つのコツもお伝えするので、取材ライターを目指す方はぜひ参考にしてください。
そもそも取材とは?
「取材」とは、記事の題材を取り集めることを言います。
人に質問をして情報を得るインタビューや、本や資料を読んで知識をつけること、街に出て人や物を観察すること、記事のテーマと関連する物を食べたり商品を試したりすること。これらはすべて取材です。
多くの人に読まれる記事をつくるには、取材で価値のある情報をどれだけ多く集められるかがカギとなります。今回は、人に対する取材・インタビューに焦点を当てて、取材方法と流れをお伝えしていきます。
取材までの流れ
企画・取材依頼・事前準備など、取材当日までにおこなうべきことは次の通りです。
企画・取材先を選定する
取材記事には、「ライターが記事の企画からライティングまで一貫して担当するケース」と、「編集者など第三者が用意した企画に沿ってライターが取材・ライティングのみおこなうケース」の2パターンがあります。
ライターが企画から担当する場合、まずはテーマを決め、人や店舗などの取材先を選定します。取材先候補のホームページやSNSをチェックし、企画の趣旨にマッチした相手かを確認しましょう。
取材の申し込みを断られるケースも想定して、企画の段階で取材先候補を複数ピックアップしておくと安心です。
取材依頼・アポ取りをする
記事のテーマが決まったら、取材先候補に取材の申し込みをします。
取材依頼の方法は、電話・メール・SNSのダイレクトメッセージ・直接訪問などケースバイケースです。依頼する相手にとって負担にならず、失礼にならない方法を選びましょう。企業の場合は、広報窓口を通して依頼するのが一般的です。
取材を申し込むときは、媒体概要・記事のテーマ・想定質問などをまとめた取材企画書を提示するとスムーズに依頼できます。
無事に取材許可をもらえたら、具体的な日程・場所を調整します。内容にもよりますが、取材に要する時間はおおむね30分~2時間ほど。取材の所要時間は、アポ取りの段階で先方に伝えておくのがマナーです。
取材の事前準備をおこなう
取材を成功させるには、取材当日までの事前準備が大切です。
インターネットや本を駆使しながら取材先の情報をできる限りリサーチし、頭に入れておきましょう。取材のクオリティが格段にアップしますし、取材相手に「このライターは自分のことをよく知っている」と好印象を与えられます。取材先についてリサーチしたうえで「当日はこんなことを聞いてみたい」「ここを深掘りしたい」とイメージを膨らませておくとよいです。
取材当日に緊張して何を聞いたらよいのかわからなくなりそうなときは、質問リストを用意しておくのがおすすめ。頭が真っ白になったときでもリストを見れば気持ちが落ち着きますし、重要な質問を聞き忘れることもありません。
取材当日の流れ
取材当日は、清涼感のある服装と髪型にしたり丁寧な言葉遣いを心がけたりして、相手によい印象をもってもらえるように気を配りましょう。時間厳守や明るいあいさつなど、社会人として当然のマナーもしっかり守ってください。
取材当日の流れの大枠は以下の通りです。
- あいさつ・名刺交換
- 媒体概要と企画趣旨をあらためて説明
- インタビュー
- 撮影(必要な場合)
- 原稿確認など今後のスケジュールの確認
最初のあいさつを終えて実際にインタビューをはじめる前に、あらためて媒体概要と企画趣旨を確認しておきましょう。双方の認識をすりあわせたり、あらためて取材の目的を伝えたりすると、やりとりがスムーズに進みやすくなります。
取材に持参するもの
インタビューや取材をおこなうときに用意しておきたいアイテムの一例は以下の通りです。
- ボイスレコーダー・スマートフォンなどの録音機器
- メモ
- 筆記用具
- 質問リスト
- 名刺
- カメラ(ライターが撮影もおこなう場合)
取材のやり方はライターによって千差万別ですが、会話が途切れない程度にメモをとりつつ、ボイスレコーダーなどでやりとりを録音しながら話を聞くのが一般的です。
聞いたことを1から10までびっちりとメモを取るライターがいる一方で、メモは一切取らずに雑談形式で取材するライターもいます。こうしなければいけないという決まりはないため、数をこなしながら自分に合った方法を見つけていきましょう。
ボイスレコーダーなどの録音機器を使うときは、電源の入れ忘れや、充電・容量不足といったうっかりミスに注意してください。
取材後の流れ
無事に取材が終わったらライティングをおこない、取材先に原稿内容の確認をお願いしましょう。取材後の一連の流れを解説します。
取材で得た情報をもとにライティングする
取材で得た情報をもとにライティングをおこないます。ここで活躍するのが、取材時にとったメモと音源です。
慣れないうちは、取材音源を何度も聞き直しながらライティングするとよいでしょう。音源をあらためて聞き返すことで、取材時には聞き逃していた相手の発言に気づけたり、発言の陰に隠れた意図を読み取れたりするからです。
また、取材中に登場した具体的な数字や商品名・会社名などを再確認するときにも、メモと音源が役に立ちます。
音源を聞いただけでは情報を整理できない場合、テープ起こしのように一度テキスト化してから、ライティングをはじめてもよいでしょう。
原稿を取材先に確認してもらう
原稿が完成したら、必ず取材相手に原稿をチェックしてもらってください。掲載後に「こんなことは言った覚えがない」「ここはオフレコでお願いしたかったのに」などと取材先に指摘されるトラブルを避けるためです。
取材先に完成した原稿を見てもらったうえで修正の指示があれば対応し、OKが出るまで何度も確認してもらいます。
ここでのやりとりの回数や修正箇所が多いと、ライター・取材先双方にとって大きな負担となります。大幅な修正の発生を防ぐためには、取材終了時に記事のイメージやおおまかな方向性を取材先とすり合わせておくのがよいでしょう。
取材を成功させる5つのコツ
ここまで、取材記事をつくる大まかな流れを確認してきました。次からは、より具体的に「取材を成功させるコツ」を5つお伝えします。
はじめて取材をするライターでもすぐに実践できる方法なので、ぜひ試してみてください。
取材までの事前リサーチを入念におこなう
事前準備が取材の成功・失敗を決めると言っても過言ではありません。
まず、取材対象者・物のことを徹底的に調べ、取材で聞きたいことを頭の中でイメージしておきましょう。ホームページやSNSはもちろんのこと、別メディアでの取材記事やインタビュー記事が存在していれば、それも熟読します。
取材相手が「この人は自分のことを全然知らないな」と感づいた途端、口を閉ざしてしまったり、通り一遍のつまらない話しかしてもらえなくなったりする可能性もあります。最悪の場合相手を怒らせてしまい、取材中断となることもありうるでしょう。
事前準備をしっかりおこなうことには、ライター自身が自信をもって取材に臨めるというメリットもあります。「取材対象についてこれだけ詳しくなったし、知識も付けたから大丈夫」と思えれば緊張も和らぎますし、取材も成功しやすくなります。
取材対象者との関係を良好にする
取材対象者に好印象をもってもらうことも大切です。取材が円滑に進むことはもちろん、「この人になら」と、別のインタビューでは聞き出せなかった貴重な情報まで話してもらえることもあります。
よい印象をもってもらうのは、むずかしいことではありません。取材をはじめる前に「今日の取材がすごく楽しみでした」「あなたのことを尊敬しています」「ここのお店の大ファンでした」など、一言伝えるだけでも場の雰囲気がグッとよくなります。
取材相手が緊張しているなと感じたときは、アイスブレイクとして取材とは関係のない雑談や簡単な自己紹介を挟むのもおすすめです。
取材中は、相手が気持ちよく話せるよう適度に相づちをうちつつ、自分ばかりが話し過ぎないように気を付けてください。ネガティブなことや失礼なことは、間違っても口にしないようにしましょう。
記事のテーマや落としどころを明確にしてから取材に臨む
記事の主題がはっきりしないまま闇雲に取材を進めると、聞くべきこと・聞かなくてもよいことの判断がつかなくなります。
たとえば、「A社長がB社を起業したきっかけとその成功談」を記事にするのに対し、「A社長の事業の話を聞きに行こう」くらいの心づもりで取材に臨んだとします。すると、A社長が今後展開を予定している新規事業の話で思いのほか盛り上がり、起業のエピソードを十分に聞けないままに取材時間が終わってしまった……ということが起こりやすいです。これでは、A社長の起業についての詳しい記事を書けないでしょう。
記事のテーマと落としどころを明確にしておかないと、限られた取材時間の中で充分な材料を得られなくなります。「誰に何を聞くのか」を明確にしてから取材に臨むことが、取材を成功させるコツです。
また、取材対象者が、企画趣旨や掲載媒体について良く理解していないケースもあります。取材相手にも記事のねらいを認識してもらうことで、テーマとは無関係な方向に話がそれにくくなり、取材がスムーズに進みます。取材を開始する前に、取材の意図とテーマを再度確認しておきましょう。
わからないことはその場で聞く
取材中、はじめて聞く単語や専門的な話が出てくることもあるでしょう。取材をテンポ良く進めるために「わからないことがあっても後で調べればいい」と思いがちですが、疑問点は相手の話を中断してでもその場で聞いておくことをおすすめします。
なぜなら、後々リサーチしても正しい情報が見つからなかったり、相手の真意とは異なる解釈をしてしまったりする可能性があるからです。
積極的に質問することで、取材先としても「こんなことも知らないのか」ではなく、「自分の話を真剣に聞き、理解しようとしてくれている」とよい印象を抱いてくれるはずです。疑問があれば、遠慮なく取材中に質問するようにしましょう。
常に経過時間を気にしておく
取材のタイムキーパーは、ライターです。決められた時間内で聞きたいことをすべて聞き出せるよう、視界に入る位置に時計を置き、経過時間を確認しながら取材を進めましょう。
ペース配分は、1時間のインタビューで10の質問を用意していた場合、「前半30分で5問・後半30分で5問」など大まかでかまいません。意識するかしないかだけで、うまくペース配分できるか否かが変わります。
相手の話があまりにも長い場合や、関係のない話が延々と続く場合は、ライターが舵を取り軌道修正してください。「ところで」「そういえば」といった接続詞を活用し、本筋から逸れないように調整しつつ取材を進行します。
しかしながら、こうしたテクニックは取材に慣れたライターだから駆使できることもあります。はじめて取材に臨むときは常に経過時間をチェックして、聞くべき質問を聞き逃さないことだけでも意識してみましょう。
取材に対応できるとライターとしての仕事の幅が広がる
ライターが取材記事を書くときの企画から取材方法、ライティングの流れと「取材を成功に導く5つのコツ」をお伝えしました。
取材記事は、制作するのに専門的な技術や経験を要するコンテンツです。取材・インタビューに対応できるとライターとしての仕事の幅がグッと広がります。本記事で紹介した取材方法やテクニックを参考に、ぜひチャレンジしてみてください。
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