注意事項

機密保持契約に関する注意事項

クライアントからの仕事を受ける際は「機密保持契約のルール」を押さえ、これを順守する必要があります。機密保持契約とは外部への情報漏洩を禁止する契約を指し、この規定に違反したライターは法的な責任を追及されるのです。

本記事では機密保持契約の概要、クラウドソーシングで機密保持契約を締結する際の注意点などを紹介します。情報漏洩に関するライターの責務がわかるので、ぜひご一読ください。

機密保持契約とは

機密保持契約とは、端的に言えば仕事で知り得た情報を第三者に漏らさないことを約束する契約のことです。

発注者は仕事を依頼する際、受注者に対して自社のノウハウや知識を共有する場合があります。こういった情報が受注者経由で競合他社に漏れてしまうとノウハウ等が盗用され、競合への優位性を保てなくなる可能性があります。またブランドイメージや顧客からの信頼などを鑑み、記事作成に外注ライターを利用していることを世間に知られたくない場合もあるでしょう。

以上のことなどを理由に、機密保持契約を締結し、受注者に対して情報の開示・漏洩を禁じているのです。

禁止事項

機密保持契約の内容はクライアントによって異なりますが、情報の開示・漏洩が禁止される代表的な事柄は以下の通りです。

  • ライター名
  • クライアント名
  • 記事の内容
  • 執筆に使用した資料やノウハウ

簡単にいうと「私はこの会社でこんな記事を書きました」「この会社ではこのように記事を作成しています」といったことを他者に漏らす行為を禁じています。実際にライターが締結する機密保持契約書には「営業秘密と固有名詞の漏洩を禁止する」と書かれている場合も多いです。

営業秘密については後述しますが、固有名詞とは簡単に言えば、関係者の名前・名称のことです。固有名詞と個人情報は必ずしも一致するものではありませんが、個人情報についても個人情報保護法の規制がかかるので、開示・漏洩は禁じられています。またクライアントによっては、社内システムを利用するためのIDやパスワードを他者に漏らすことを禁じたり、「移動用端末には弊社とのメール履歴を残してはいけない」との規定があったりします。

罰則

機密保持契約は業務委託契約と同様に契約の一種ですから、第三者に情報を漏らす行為は立派な契約違反行為に該当します。情報漏洩がクライアントに発覚したら契約を打ち切られる可能性は高く、最悪の場合、訴訟にまで発展するでしょう。また情報漏洩をしたことが噂で広まると、案件に応募しても受注できなくなる可能性もあります。

このように機密保持契約に違反したライターは、さまざまなデメリットを受けることになります。「納期は守る」「著作権を侵害しない」といった基本的なルールと同様、仕事に関する情報は他人に漏らさないよう注意が必要です。

契約時の注意点

機密保持契約を締結する際は、秘密情報の範囲や契約期間を明確にしておきましょう。曖昧な部分を残さないことで、トラブルや疑問点が生じた際も迷うことなく対処できます。

また情報漏洩は故意ではなく、うっかりミスで起きる場合があることに注意してください。不注意による情報漏洩を防ぐためにも、パソコンのセキュリティをしっかりと管理しましょう。Wi-Fi通信やパソコンの画面を盗み見される危険があるため、できる限り、コワーキングスペースやカフェ等での作業は避けてください。

機密保持契約を交わさない場合でも情報を漏洩してはならない

機密保持契約は必ず交わさなくてはいけないものではありません。とくに個人のクライアントの場合、機密保持契約を締結しないケースは多いです。

しかしたとえ契約を交わしていなくても、業務で知り得た事柄を他者に開示・漏洩する行為はタブーです。事業者の公平な競争を促す不正競争防止法では「営業秘密の漏洩」が禁止されており、上記のような行為はこちらの法律に抵触する可能性があります。

ここでは不正競争防止法で規定された営業秘密の漏洩について詳しく見ていきましょう。

不正競争防止法の「営業秘密の漏洩」とは

不正競争防止法では営業秘密の漏洩を禁止しており、ルールを破った場合「10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金」を受けます。人を死に至らしめる業務上過失致死傷罪でも5年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金にとどまることを考えると、営業秘密の漏洩に対する罰則の厳しさが伝わるでしょう。

では不正競争防止法における営業秘密とは具体的にどういったものを指すのでしょうか。経済産業省が提供する資料では、営業秘密の中身について以下3つのポイントがあると書かれています。

  • 秘密管理性
  • 有用性
  • 非公知性

上記3つのうち1つでも当てはまれば、営業秘密に該当する可能性があります。それぞれのポイントを解説するので、ぜひチェックしてみてください。

秘密管理性

秘密管理性とは、社内でその情報が秘密事項として管理されていることを指します。具体的には従業員に対して機密事項であることが明示され、取引先に対しても秘密管理の意思が明示された情報です。個人情報はその他の情報と比較し、秘密管理性が肯定される傾向にあります。

有用性

有用性とは、客観的に考えて、事業活動にとって有用な情報という意味です。反社会的行為に関するものなど公序良俗に反する情報を除き、商業的価値をもつ幅広い情報について有用性が認められます。事業に活用している情報でなくても対象になる場合があります。

非公知性

非公知性とは、その情報が一般に公開されておらず、かつ容易に入手できない情報のことです。企業のサイトを見たり購入した商品をチェックしたりしても、簡単に推測・分析できない情報である必要があります。

クラウドソーシングで機密保持契約を締結する際の留意点

クラウドソーシングでは機密保持契約に関して、一定のルールを設けています。直接契約とは取扱いが異なるので、クラウドソーシング特有の規定を把握しましょう。

NDAオプションを利用する

クラウドワークスではマイページにNDAオプションという項目が設けられています。ここにチェックを入れると「私は機密保持契約を守って仕事をします」と宣言した状態になり、機密保持契約の締結が可能な者にだけ表示される案件に応募できます。

機密保持契約では本名を開示する必要がある

クラウドソーシングで機密保持契約を締結する場合、本名で契約を交わす必要があります。クラウドソーシングは匿名で利用できる点がメリットですが、機密保持契約を交わすとこの利点が無くなってしまうことは認識しておきましょう。個人情報を開示しても問題ない場合に限り、機密保持契約を締結してください。

条件面で同意できなければ「契約終了リクエスト」を送り、途中で契約を解除することも可能です。

独自の書式を求めるクライアントには注意する

クラウドソーシングが提供する機密保持契約書のひな形を利用せず、独自の契約書を使おうとするクライアントには注意してください。なぜなら、最初から個人情報を集める目的で契約を交わそうとしている場合があるためです。住所や本名だけでなく、LINEのIDなどその他の情報を聞き出してくる場合、要注意です。

ただし、純粋に会社で定められた書式を使おうとしているだけかもしれないので、悪徳クライアントかどうかは自分で判断する必要があります。判断に迷う際はそのクライアントの実績や評価を確認し、判断材料の一つにしましょう。

クラウドソーシングにおける機密保持契約の内容

クラウドソーシングでは機密保持契約書のひな形が用意されているため、これを使用して機密保持契約を締結します。ここではクラウドワークスの契約書を例に、クラウドソーシングの気密保持契約の内容について解説します。

情報漏洩を禁止する秘密情報

クラウドワークスの機密保持契約書では、情報漏洩を禁ずる秘密情報を「当事者の一方が相手方に対し提供・開示した技術情報や営業情報、財務情報、企業情報に至るまで一切の情報」と規定しています。ただし、以下の情報は秘密情報から除外されています。

 (1)開示者から開示を受ける前に、被開示者が正当に保有していたことを証明できる情報 (2)開示者から開示を受ける前に、公知となっていた情報 (3)開示者から開示を受けた後に、被開示者の責に帰すべからざる事由により公知となった情報 (4)被開示者が、正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく正当に入手した情報 (5)被開示者が、開示された情報によらず独自に開発した情報

クラウドワークス/【共通】秘密保持契約の内容について

基本的に公にされている情報や、正当な手段を使って自分で入手した情報以外は他者に開示・漏洩してはいけません。個別具体的なケースをあげるときりがないので、原則、クライアントから受けた一切の情報は開示してはいけないと覚えておくことをおすすめします。

ただし、例外なく決して情報を他人に漏らしてはいけないわけではありません。事前にクライアントから書面による承諾を得れば、第三者への情報開示・漏洩が認められます。再委託に出す場合も、事前にクライアントから書面による許可を受けていれば、下請けに対し業務に関する情報を伝えられます。

また、すべての人に対し情報漏洩を禁止しているわけではないことも知っておきましょう。クラウドワークスの機密保持契約書には「役員や使用人のうち、業務遂行上、秘密保持情報を開示する必要がある者」であれば、開示しても差し支えないと規定されています。

その他の禁止事項

機密保持契約では、秘密事項の開示・漏洩以外にも、次の行為が契約者双方に禁止されているので確認しておきましょう

  • クライアントから得た秘密情報を、契約の目的以外に使用すること
  • クライアントから開示された秘密情報を複製して使用すること
  • 秘密情報を含む資料を、第三者に使用許諾を与えたり、譲渡・貸与したりすること

損害賠償

本契約に規定する条項に違反した者は損害賠償責任を負います。クラウドワークスの契約書では損害賠償額について具体的に書かれていませんが、これは賠償額の上限が存在しないことを意味します。契約違反の内容によっては高額の賠償金を請求される可能性もあるので注意しましょう。

案件の応募時に機密保持契約を締結して書いた記事を利用できるのか

機密保持契約を締結したクライアントで執筆した記事を、他案件の応募時に実績として公開してもよいか悩むライターもいるでしょう。応募時に過去に執筆した記事の提出を求めるクライアントは少なくありません。

結論からいうと、機密保持契約を締結したクライアントで執筆した記事は、たとえ案件への応募が目的だとしても、応募先に開示してはいけません。これは立派な契約違反行為に当たるので、契約解除や損害賠償といった不都合を被る可能性があります。

基本的にポートフォリオに利用できるのは、執筆者名が記載された記事、もしくはクライアントからポートフォリオ掲載についての許可を受けた記事のみです。クライアントから許可を得ていれば、機密保持契約に則って執筆した記事でも応募時に利用できます。とはいえ、クライアントは情報の開示・漏洩を禁止するために機密保持契約を交わしているのですから、応募時の利用に関して許可をもらえる可能性は低いでしょう。

案件応募の際に使える記事がない場合、自身のブログを利用するのも一つの手です。仕事が欲しいからといって、取引先との機密保持契約の規定を破らないよう気を付けましょう。

どこまで機密保持契約を結ぶと添削依頼できないのか

スキルアップ等を理由に、先輩ライターや著名なライターに添削を依頼したいと考える方もいるでしょう。しかし、機密保持契約を締結したクライアントの依頼で執筆した記事を添削依頼に出す行為は危険です。

クラウドワークスの機密保持契約書の規定では、再委託の場合のほか第三者と共同して業務を遂行する場合も、事前に開示者の書面による許諾を受ける必要があると書かれています。添削は「共同して業務を遂行する行為」ではないかもしれませんが、いずれにせよ、秘密事項を第三者に開示する場合はクライアントから書面による許可を受ける必要があります。

クライアントに相談した結果、承諾を得られなかった場合は、残念ながらその記事を添削依頼に出すことはできません。レベルアップを図りたいのであれば、自身で保有するブログ記事を添削に出すか、もしくはディレクターから丁寧なフィードバックをもらえる案件で執筆するのがよいでしょう。

機密保持契約を交わしていなくても、情報漏洩は原則禁止

ライターは原則、業務上で知り得た一切の情報を第三者に開示してはいけません。業務委託契約とは別に機密保持契約を交わす場合もありますが、秘密保持に関する契約が無くても、業務を遂行する上で第三者への情報開示・漏洩は原則、禁止されています。

事業者間の公平な競争を促す不正競争防止法では関係者に対し営業秘密の漏洩を禁止しており、違反すると法的な責任を追及されます。たとえ案件への応募が目的であったとしても、第三者に対して執筆記事を公開してはいけません。どうしても必要がある場合は、記事を公開してもよいか、必ずクライアントに許可を得るようにしてください。

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