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ライターがクライアントとの関係で押さえておくべき5つのポイント

ライターはクライアントから仕事をもらうことによって成り立つ商売なので、取引先との関係では弱い立場に置かれます。報酬の支払いが遅れたり、無報酬で追加の作業を依頼されたり等クライアントとのやり取りで憤りを感じることがあっても直接文句を言えない方は多いでしょう。

こうしたとき不当に搾取されないためにも、法律や契約についてきちんと把握する必要があります。そこでこの記事ではクライアントとの関係でライターが押さえておくべきポイントとして下記の5つをご紹介します。

  • 契約時に確認すべき項目
  • 下請法で禁止されている項目
  • 納品物をポートフォリオに掲載する際の注意点
  • 下請けに依頼する際の注意点
  • テストライティング応募時の注意点

ぜひ参考にしてください。

ライターが契約時に確認すべき項目

ライターはクライアントとの間で業務委託契約を締結した上で、業務に取り組みます。そして業務上トラブルが生じた場合、基本的に契約の内容に沿って責任の所在について判断されます。

したがって契約書を交わす際は自身にとって不都合な内容が含まれていないか注意が必要です。ライターが契約時に必ず確認しておくべき項目と注意点をご紹介します。

報酬

労働に見合う対価を受け取るために報酬についてきちんと確認しておきましょう。確認すべき項目は以下の通りです。

  • 1記事当たりの単価
  • 支払い時期
  • 単価は税込or税抜
  • 単価は源泉徴収される前の金額or後の金額

報酬形態は大きく記事単価方式(ex.1記事4,000円)と文字単価方式(ex.1文字2円)の2つがあります。

記事単価方式では想定文字数の超過分に対しては報酬が発生しないので注意してください。報酬の支払い時期については、納品後60日以内に支払われない場合、下請法違反となります。60日以内であれば翌々月の支払いも法的には問題ありません。また請求書の提出は必要か等、請求方法についても確認しましょう。

源泉徴収の仕組み

報酬から所得税を控除し、クライアントが代わりに国に対して納税する行為を源泉徴収と呼びます。

フリーランスや個人事業主が源泉徴収を受けるかどうかは作業内容によって決められ、ライティングの原稿料は源泉徴収の対象です。ただし、中には源泉徴収を行わずに報酬を支払うクライアントもいます。源泉徴収の有無で口座に入金される金額が変わるので、契約時に、源泉徴収があるのかしっかり確認しておきましょう。

また源泉徴収が行われる場合、確定申告の際に必要となるので、徴収された金額を把握しておかなければいけません。源泉徴収の金額は全体の報酬額に対する割合で示され、報酬額が100万円に満たないケースでは「報酬額×10.21%」となります。

業務範囲

契約後に想定外の作業を依頼されたということがないよう、契約前に業務範囲を明確にしておきましょう。業務範囲について確認すべきポイントをそれぞれ解説していきます。

修正・契約不適合責任

修正の内容如何で工数が大きく変わります。修正の有無・回数・程度などできる限り具体的に把握しておきましょう。

修正については、契約不適合責任の内容をしっかりと理解する必要があります。契約不適合責任とは引き渡しの目的物が契約の内容に適合しないと認められる時、修理物や代替物、不足品の引き渡しを行わなければならないというものです。発注者が定めた期間内に上記の対応が行われない場合、報酬を減額することも可能です。

契約不適合責任は2020年の民法改正によって、瑕疵担保責任の代わりに導入されたものです。瑕疵担保責任では納品物に欠陥がある場合に修補請求が認められていましたが、契約不適合責任では、欠陥がなくても契約内容に適合しない部分があれば修理の必要が生じます。

契約不適合責任における修補請求の通知は「契約の内容に適合しないことを知った時から1年以内」に行えば問題ないとされています。瑕疵担保責任では「納品から1年以内」の請求が必要だったので、修補を請求できる期間が従来よりも伸びました。

契約不適合責任では契約の目的や内容が非常に重要です。契約締結時はクライアントが何を求めているか、その目的を達成するために自分は何をすれば良いのか、曖昧な部分を残さずに契約を交わしましょう。

画像の選定

画像の選定も作業内容に含まれるか確認しましょう。確認すべき項目事項は以下の通りです。

  • そもそもやる必要があるのか
  • 記事内に画像は何枚必要か(アイキャッチも含めるのか)
  • 画像はどこから持ってくれば良いのか

記事内容に即した画像を探すのは意外と時間がかかります。作業を開始してから工数の多さに不満を抱かないためにも、画像に関する業務範囲を明確にしましょう。中には画像の選定先を明示していないクライアントもいますが、この場合、利用可能なフリー画像サイトを自分で見つける必要があります。

サイト選定の際は、サイトの利用規約を確認するようにしてください。サイトによっては画像の商用利用を禁止している場合があり、こういったサイトの画像は記事作成では利用できないためです。

納品形態

納品形態によって工数が変わる場合があります。したがってWordやGoogleドキュメントで納品するのか、それともクライアント指定のシステム(ワードプレス等)への入稿も求められるのか等の確認が必要です。システムへの入稿が必要な場合、以下のような細かな作業範囲も確認しましょう。

  • マーカーや太文字等、文字装飾も必要か
  • 画像のアップロード作業も必要か
  • アフィリエイトの場合、リンクの設置作業も必要なのか

損害賠償

業務遂行上クライアントに損害を与えたライターは、その損害を賠償する責任を負います。

ライターが損害賠償責任を負う可能性がある行為には、情報漏洩、納期遅延、納品物の瑕疵、著作権侵害などが挙げられます。

賠償額に関しては、法的には上限額を示さなくても問題ありませんが、高額の賠償金を請求される可能性があるため「委託金額を上限とする」等、上限額を設定することをおすすめします。

契約期間と解除

契約期間内は契約内容に拘束されるため、期間の長さに問題がないか確認してください。

長期案件では契約更新に関する規定も定められます。自動更新の場合、何もせず期間が経過すると契約が継続するので、契約終了を検討している際は注意しましょう。また解除の条件も契約で明確に定めることをおすすめします。

契約書で解除の条件を定めなくても、報酬の支払い遅延があったり契約に定めがない業務を依頼されたり等、相手方に債務不履行の事実が認められれば解除は可能です。しかし債務不履行以外でも解除事由が発生する場合があるため、契約書で明文化しておきましょう。

契約書で定めされた解除事由以外でライター側から契約期間内に契約を解除することは、原則不可能なので注意してください。

その他

上記以外で契約時に確認が必要なことを列挙します。

  • 文字数の上限、下限
  • ミーティングや打ち合わせの有無、場所
  • 経費の負担はどちらが担うか(交通費や宿泊費、通信費等)
  • 秘密保持に関する規定
  • 管轄裁判所

秘密保持に関する規定とは、業務上知り得た事由を第三者に漏らしたり、不正に利用したりすることを禁止するためのルールです。業務委託契約書の条項に含まれる場合のほか、別途、秘密保持契約を締結する場合があります。

下請法で禁止されている項目

クライアントがライターとの関係で守るべき義務を定めた法律として下請法があります。

フリーランスや個人事業主のライター(資本金が1,000万円以下)は、クライアントの資本金が1,000万円を超える場合、下請法の適用を受けます。クライアントとの関係で弱い立場に置かれやすいライターが自分の身を守るために、下請法で定められた発注者の責務を学びましょう。

契約書を発行しない

クライアントはライターに対して業務を発注する際、書面を交付しなければいけません。この書面は一般的には契約書のことを指し、給付の内容や期日、下請代金の金額などを記載する必要があります。口頭でも契約自体は成立しますが、「言った言わない」の問題が生じることを避けるためにも、契約の内容は必ず文書で残しましょう。

報酬を減額する

契約後の報酬減額はたとえライターの許可があったとしても、禁止されています。契約の途中で振込手数料や税金を報酬から控除するようを変更する行為も認められません。ただし「納期に遅れる」「契約の目的を達することができない成果物を提出する」等、ライター側の責めに帰すべき事由がある場合、報酬の減額が認められます。

作業内容を変更する

追加で作業を依頼する等、契約で定めた業務内容を途中で変更する行為は認められません。

たとえば原契約ではテキスト納品が指定されていたのに、次回からシステム入稿まで担当するよう依頼された場合、これは禁止行為に該当します。また業務量を追加する場合だけでなく、減少させる行為も許されません。

ただし変更分の報酬増額も合わせて実施されるのであれば、作業内容を変更しても問題ないとされています。下請法は下請け事業者(ライター)を保護することが目的なので、ライターに不利益な内容の変更でなければ認められます。

納品物をポートフォリオに掲載する際の注意点

原則としてポートフォリオに過去執筆した記事を掲載する際は、その記事を納品したクライアントの許可を取りましょう。なぜなら記事の著作権はクライアントが持っている場合が多いためです。

一般的に業務委託契約では、納品後(もしくは検収後)、受託者から発注者に著作権が移ります。したがってクライアントに無断でポートフォリオに掲載する行為は、他人のものを勝手に使用していることに他なりません。無断掲載の事実がクライアントに発覚すれば、記事の削除請求を受けたり、契約を打ち切られたりするかもしれません。最悪裁判沙汰になり、損害賠償請求を受ける可能性もあるので無断使用は止めましょう。

一方、契約内容が著作権の譲渡ではなく利用許諾の場合、著作権はライターが保有したままなので、ポートフォリオ掲載に関してクライアントの許可は不要です。このように、ポートフォリオ掲載時にクライアントの許可が必要かどうかは契約内容によります。

下請けに依頼する際の注意点

納期が重なっていたりリソース不足に陥っていたりする場合、今抱えている仕事を下請けに出したいと感じる場合もあるでしょう。しかし下請けに出す行為はクライアントとのトラブルの火種にもなりかねないので注意してください。

この場合も確認すべきは業務委託契約の内容です。業務委託契約では再委託に関することも規定されています。契約書に「本業務は再委託を禁止する」との記載があれば、下請けに出すことは認められません。禁止されているにも関わらず下請けに出してしまった場合、損害賠償等、法的な責任が生じる可能性もあります。バレないだろうと思うかもしれませんが、文章は人によって大きく異なるため、別のライターが書いたことにクライアントが気づく可能性は高いです。

また契約書に「承諾を得た場合に限り、適正な範囲で再委託できる」と書かれる場合もあります。このケースでは事前に了解を得ていれば、再委託が認められます。どちらにせよ契約内容が重要なので、下請けに出したい場合は業務委託契約書の記載を確認しましょう。

テストライティング応募時の注意点

契約前にテストライティングが課せられるケースは多いですが、中にはテストライティングを無報酬とする案件も見受けられます。このこと自体は違法行為ではありませんが、安く記事を手に入れるために無報酬でテストを行っている場合もあるため、こうした案件は応募しない方が良いでしょう。

またクラウドワークスではサイトの利用規約において、無報酬テストライティングの実施を禁止しており、事務局への違反報告も可能です。買い叩きを防ぐためにも、このような案件を見つけたら運営に報告するのも良いかもしれません。

不利な立場に置かれないよう契約内容や下請法の規定を確認

ライターとクライアントの関係は、契約内容によって規定されます。

業務を開始した後に想定外の事由で困ることがないよう、契約を交わす前に契約書の内容はしっかりと確認しましょう。

また下請法には親事業者の禁止行為が規定されています。クライアントの違法行為を防ぐためにも、下請法の内容を頭に入れ、自分の身を守りましょう。

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